
まずデビッド・メイソンらによれば、「ビジネスと非営利事業組織に共通する構成要素は人間である。したがって、多くの場合ビジネスの世界で形成されたコンセプト、特にマーケティングの概念は、ボランティアやボランタリー組織に適用することが可能である」と、公共・非営利事業組織が営利事業組織の経営管理手法であるマーケティングの概念を取り入れる理由のなかで述べている6)。 またフィリップ・コトラーはその著書「非営利組織のマーケティング戦略」のなかで、営利組織のマーケティングコンセプトに加えて、非営利組織では、2つの外部的要因が活動を継続するうえで重要であると説く7)。それらはpolitical power(政治的圧力)とpublic opinion fomation(世論)である。公共・非営利組織のマーケティングのプライオリティは事業者にあるのではなく、政治行政的圧力などの外部からの力の影響により決定され、サービスの利用者、市民(生活者)のチェック機能によって評価を受けているという。 さらに、クリストファー・ラブロックはボランタリー組織、非営利組織が社会的ベネフィットを形成する活動を行う際、そこには自然に競争原理がはたらくため、非営利組織の事業展開のための必要事項として、?@旺盛なリーダーの事業家精神、?A提供するサービスの社会的商品力、需要のレベル、?Bプランナーあるいはディレクターである行政と実行者である委託先の非営利団体との人的交流、などを提示し、競争市場内での生き残り戦略を解説している8)。そして欠如事項として、サービス概念の不明確、不徹底と、事業評価システムの欠如をあげている。 このように市民セクターが市民社会に対して何らかのサービスを提供している組織であるかぎり、そのサービス管理にとってマーケティング概念を取り入れることの重要性は証明されるといえよう。 (b) サービスのクオリティ・コントロール 営利組織の事業活動によって産出される財・サービスの品質管理(クオリティ・コントロール)は、ある意味で計測可能であり、標準を逸脱する財・サービスを排除、管理する経営努力を実践しやすい。なぜなら財・サービスを受ける消費者が対価を支払っているため、その品質に不満があれば、消費をやめたり、消費者相談や行政に対して何らかの不満の意志表示などするため、事業主が直接的にフィードバックを得ることが可能だからである。 しかし市民セクターの場合、サービスのクオリティが低下しても、損失の発生や製造物責任で訴訟を経験するようなことがない。したがって、サービスの受け手からのフィード
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